自閉症スペクトラム障害(ASD)は「コミュニケーションの障害」と言われています。
しかし、コミュニケーションとは相互的なものですから、その成否の要因は相互にあるはずです。
それなのに齟齬があった際、どちらかだけが一方的に「障害」とされるのはいかがなものでしょう?
そもそも「コミュニケーション」とは何でしょう?
「コミュニケーション能力」なるものの構成要素は何でしょう?
こういった視点に立ちまして、ASDについて考察していきたいと思います。
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コミュニケーションは、自分の思考や感情を相手に伝達することと、相手からの意思や感情を受信することで成立します。
しかし、相手の意図とは異なった受け止め方をして意思や感情の疎通に支障が出ることはままあります。
それではこのようなミスコミュニケーションはなぜ起きるのでしょう?
人は誰でも、物事の理解や感じ方の様式(フォーマット)を持っています。
それに基づいて物事を理解し、考え、感じ、そして表現します。
「自分がされて嫌なことは人にもしない」とか「自分がされて嬉しいことを人にもしましょう」とはよく言われますが、
されたら嫌なことや嬉しいことは人によって異なります。
フォーマットが異なれば受け取り方も異なり、これがミスコミュニケーションの起きる要因となります。
ASDにおいては、物事の理解や感じ方の様式が、定型発達者と比べて多分大きく異なっており、
そのためにコミュニケーション不全が起きやすいであろうことは十分考えられます。
ただ、ここで注意したいのは、「コミュニケーション能力」や「コミュニケーションの障害」なるものが単独で、局在論的に存在しているわけではないであろうということです。
(局在論:脳のある特定の部位が壊れているから「コミュニケーションの障害」が出ている、というわけではないということ。
「自閉症の脳にはこんな特徴がある」という証拠は画像診断において特定されていないようです)
次回は、ASDと定型発達者の認知特性について見ていきたいと思います。