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学問的な話

2020.03.22 学問的な話

意味やニュアンスが転じた専門的用語たち④~認知の歪み~

「認知の歪み」とは元々、認知療法の用語である。
同じ出来事であっても捉え方がネガティブであればネガティブな感情を引き起こすし、
捉え方がポジティブであればポジティブが感情が生じる。

捉え方が非現実的なまでにネガティブだったり、不都合な事実にしか着目しなければ抑うつ的になるので、そうした捉え方の傾向をよりニュートラルに修正することを目指すのが認知療法である。
「認知の歪み」とはこのような、心を病む原因となるような捉え方を指して言う。
ただの認識違いや事実誤認、錯覚などは「認知の歪み」とは言わない。

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日常場面において、ただ「認識違い」などと言えばいいものを、相手の意見を絶対的に否定したいがために「認知の歪み」という用語が用いられるのしばしば目にするが、これは極めて悪質であると思う。
いかにも学問的なオーソライズに基づいて否定しているかのような印象を与え、否応なく相手を否定するレッテル貼りになりかねないからである。
そしてそれは心理療法の趣旨にも反する。

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