発達障害と状態は似ていても鑑別が必要な障害については以前紹介したが、内因性精神疾患(統合失調症・双極性障害)との鑑別も必要なのでここに記載する。
〇統合失調症
発達障害概念が周知されるまでに統合失調症と診断されたうちの何割かはASDだったと言われている。
実際、ASD当事者の間でも「抗精神病薬を処方されたが副作用に苦しんだだけだった」といわれることは少なくない。
これは確かに有害なことだが、こうした話が広まって鵜呑みにされることで心配なのは、ASD未診断の人が統合失調症なのにASDだと思って医療にかかる機会を逸することである。
(それでも幻覚妄想が顕著になれば遅かれ早かれ受診することになると思いますが)
〇双極性障害
発達障害と双極性障害は併発することもある。
また発達障害者が双極性障害の治療を受けても著効するので(気分の浮き沈みについて)、その意味ではどちらに診断されても支障はないかもしれない。
しかし発達障害の場合は自分の特性をよりよく理解し、定型者仕様の社会にどう適応していくかを模索する作業が必要となる。
問題は、双極性障害を無視して発達障害にのみ目を向け(または双極性障害を発達障害と思い込んで)、医療的ケアが受けられないことである。
〇内因性精神疾患を見逃すことの弊害
どれだけ生活習慣を改善しようと、ストレス要因を取り除こうと、薬物療法がなければ統合失調症も双極性障害も進行する疾患である。
どちらにも共通する症状に認知機能障害があるが、これは幻覚妄想よりも社会適応を困難にする要因として知られている。服薬で進行を緩和しなければいずれ社会生活が困難になるであろう。
これらの疾患は生涯に渡って服薬が必要である。
(余談だが、これらの疾患は障害年金の取得に有利になるようだ。症状が安定することはあってもいわば不治の病だから)。