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学問的な話

2018.10.19 学問的な話

発達障害と境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)という概念は解体を検討すべきではないかとの声が専門家から挙がっています
他者への理想化とこき下ろしを繰り返すなどによって(例えば他者を理想化して現実離れした欲求を抱き、叶えられないと最低な人だと言って罵るなど)、激しい感情のもつれに他者を巻き込むのが彼らの特徴であるなどと言われています。

しかし境界性パーソナリティ障害と診断された人たちの中には、双極性障害Ⅱ型や複雑性PTSDの人が相当数いることがわかってきました
基本的にパーソナリティ障害は薬物療法では治せないと言われていますが、双極性障害Ⅱ型なら薬物療法で安定します。
正しく診断されないことによって適切な医療が受けられないのは非常に残念です

彼らはなぜ誤診されたのでしょうか?
それは治療者の陰性感情(悪感情)です。
0か100か、白か黒かしかない二極思考、激しい行動化、治療者に理想化とこき下ろしを繰り返す、(診療時間等の)規則が曖昧なら混乱する等の特性によって治療者に陰性感情が生じ、治療が難しいと判断されれば「境界性パーソナリティ障害」と診断されてしまうということです。

基本的にパーソナリティ障害は薬物療法の対象外であり、カウンセリングでも対応がかなり難しい病理であると言われています。
(最近は認知行動療法やマインドフルネスなどが試みられ、エビデンスも出ています)
薬物療法でもカウンセリングでも対応が難しい。つまりこれなら治せなくても仕方がないという言い訳として「境界性パーソナリティ障害」が用いられていたということです。
しかも治療者に生じる陰性感情を患者の特性のせいにできる上に、自分には対応困難だと言って体(てい)よく排斥する理由にもできてしまいます
そして一度「境界性パーソナリティ障害」の診断がつけば他の医療機関でもなかなか診てもらえないという話も聞き及びます。(とにかく扱いが難しいと思われているので)

今日、発達障害(特にASDの女性)も境界性パーソナリティ障害と診断される例があることがわかってきました。
治療者の陰性感情をかき立てるし薬物療法の対象ではないから診たくない、受け入れ体制がないからという口実で、体よく診療を断られるのが境界性パーソナリティ障害から発達障害になるなら非常に残念なことだと思います。

人間関係は相互的なものです。
治療者(支援者)に起きる陰性感情を患者(クライエント)だけのせいにするのを診断名というレッテルで正当化する姿勢を支援者は意識化し、反省すべきだと思います。

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